ウーバーイーツの単価はなぜ戻らない?「底値」と「クエストの蛇口」── AI予測の答え合わせ第2弾【2026年7月】

配達・ビジネスバイク
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俺の7月の報酬明細には、0円のクエストが2本並んでる。「3回乗車クエスト ¥0 ── 完了は1回のみ」「6回乗車クエスト ¥0 ── 完了は2回のみ」。あと1回走ってたら数百円もらえてた。それを知ってて、走らなかった。

これを見て「もったいな!」と思った人。──その感覚、実はUberに植え付けられたものかもしれない。今回はその話をする。

このシリーズは「AIに予測させて、現場のデータで答え合わせする」をずっとやってる。制度の分析(新ランク制度で結局いくら稼げる?)、その答え合わせ(AIの予測は当たったのか)、料金の中身の推測(料金アルゴリズムを設計者視点で逆算)、現場の疑問への回答(X上の疑念にAIが答える)。今回は7月頭にAIが立てた予測8本の答え合わせと、この1ヶ月でわかってきた「単価はどこまで下がるのか」の答えだ。

⚠️ いつもの但し書き。この記事は「実際のデータ」「界隈の実際の投稿」「AIと俺の推測」を分けて書く。推測は推測って書く。あと俺の配達データは「高い案件しか受けない」偏ったやつ(受諾率は一桁%)なので、普通の配達員の平均だと思わないでほしい。

答え合わせ ── 7月頭のAI予測8本、どうなった?

7月3日にAIが立てた予測を、W杯明け(7月20日過ぎ)のXの配達員投稿と、俺の実データで答え合わせした。

予測 AIの読み(7/3時点) 結果
F-1 単価 ちょっと戻る55% / 安いまま30% △ 外れ。戻らなかった。安いままで固定
F-2 W杯の影響 W杯が終わっても変わらない65% ○ 当たり。W杯明けても単価そのまま=原因はW杯じゃない
F-3 ランクの金銭メリット 金は出ないまま50% ○ 当たり。「上位ランクで稼ぎが良くなった」報告、今回もゼロ
F-4 引き止めの金 出ない60% ○ ほぼ当たり。辞めそうな配達員に金を出す動きなし
F-5 競合の報酬支払い ちゃんと払われる70% ─ 保留。確認データが足りず。未払い騒ぎは起きてない
F-6 荷物配送(クーリエ) 年内は誤差レベル75% 観測続行(年内に判定)
F-7 ランク試験の行方 延長か拡大55% 8月末に判定
F-8 配達員に現金特典が来るか 2027年末まで来ない70% 観測続行(米国では配達員は「対象外」と明記済み)

一番大事なF-1をAIは外した。「ちょっとは戻るやろ」が本命だったのに、戻らなかった。外れは外れとしてそのまま書く。ただ、この外れ方が今回の記事の主役になる。「単価は戻らなかった。じゃあ、どこで止まってるのか?」──ここからが、この1ヶ月で一番面白かった話だ。

「分単価21円」── 最低ラインが”デフォルト”になった

知っての通り、「分単価21円」は界隈で言われてる現状の最低クラスの水準だ。この記事では、この最低ラインを「底値」と呼ぶ。

で、7月のXの配達員投稿を集めて気になったのは、底値の存在そのものじゃない。案件が底値に張り付きっぱなしなことだ。「分単価21円案件ばかりでやる気削がれる」「爆鳴りやけど分単価21円で固定されてる」──別の人が、別の日に、別のエリアで、同じ報告をしてる。最低ラインって本来「たまに引く外れ」のはずだろ? それが今はデフォルト値になってて、鳴りの多い少ないに関係なく底値のまま動かない。前に拾ったオファー画面のスクショ(21分¥462=22円/分)も、ちょうどこの帯の現物だ。

ちなみに21円/分って、60分で1,260円。ここからガソリン代とかタイヤ代とか自腹の経費を引いたら……そう、バイト以下になりかねない水準だ。底値がそのへんを狙って引かれてるんじゃないかって疑いはあるが、経費は人によって違うので断定はしない。

もうひとつ、気になる投稿があった。「だいぶ前に蹴った案件がまだキロ割れで鳴ってて、単価上げるより廃棄の方がマシって判断したんか配車AIは」──みんなに蹴られてる案件が、値上がりしないでそのまま回り続けてる。需要と供給で値段が動くなら、誰も受けない案件は上がるはずだ。上がらない。底値の案件は「せり上げ」の対象にすらなってない、ってことだ。

クエストは「蛇口」だった ── 消えて、戻った週に判ったこと

そしてこの7月、答え合わせにはもってこいの事件が起きた。7月中旬、ピークタイムのクエストがいきなり消えた。で、翌週、戻ってきた。覚えてる人も多いと思う。

ここで俺の明細を、素の配達報酬プロモーション(クエスト等)に分けて、消えた週と戻った週の同じ月曜同士で比べてみる。

クエ消えた週の月曜 クエ戻った週の月曜
1日の合計 ¥12,342 ¥15,320 +24%
うち素の報酬 ¥11,972 ¥12,720 +6%(ほぼ同じ)
うちプロモ ¥370 ¥2,600 7倍

合計だけ見たら「お、単価戻った?」って思う。でも中身を割ると、増えた¥2,978のうち75%がクエストで、素の報酬はほぼ動いてない。

つまりこういうことだ。素の単価は底値に固定されたまま。動いてるのはクエストだけ。クエストって、報酬体系の一部っていうより、Uberが手元で開け閉めできる蛇口なんだ。先週は蛇口を閉めた。今週は開けた。素の単価は、どっちの週も1ミリも動いてない。

なんで蛇口で払うのか。AIの読みはシンプルだ。素の単価を上げたら、全員の全案件に効いてしまうし、簡単には戻せない。クエストなら、払う相手を選べて、達成できなきゃ0円で没収できて、いつでも消せる。そういえば昔は雨の日って素の単価自体が上がることがあったよな? 最近は雨でもキロ割れのままで、雨の金は「1件¥150」みたいなクエでしか落ちてこない。──雨の割増も、蛇口側に引っ越しさせられたんだと俺は読んでる(俺の体感比較が根拠なので推測な)。

で、クエストがどれくらい収入を占めてるか。クエをガチで追い込むスタイルの配達員の実際の投稿で「プロモ込み時給1,900円・素の時給は1,300円割れ」──収入の3分の1がクエストって水準まで来てる。言い換えると、給料の3分の1を「条件クリアしなきゃ没収」の賞金に付け替えられてるってことだ。冒頭の「もったいない」の正体はこれだ。没収が惜しいと感じるように設計された金で、俺らの走る時間をコントロールしてる。

「そんな単価で誰が走るん?」への答え

当然こう思うよな。時給1,260円で経費自腹で、誰が走り続けるんだと。専業は身体を壊すし、副業は辞めていく。それで回るのか?──ここからはAIとの壁打ちで出てきた読みだ。証拠はまだ薄いので、そのつもりで。

まず、単価を下げても走る人は減るとは限らない。「今日は3万いくまで帰らん」って決めて走ってる人、周りにいないか? ああいう人は、単価が下がると逆に長く走る。目標金額に届くまで帰らないからだ(タクシー運転手の研究で昔から知られてる現象。逆の結果の研究もあるので決着はついてない)。下げても供給が減らないなら、下げ止まる理由が一つ消える。

次に、もっとえげつない読み。Uberは配達員を「長く働いてもらう人材」じゃなくて、「入れ替わり続ける使い捨ての流れ」として設計してるんじゃないか。相場を知ってるベテランは53円/kmを蹴る。じゃあ誰が拾うのか──相場を知らない新人だ。入口だけ新規ボーナスで美味しくして、「あれ、思ったより稼げなくね?」って気づいて辞めるまでの間に、底値の案件を捌いてもらう。辞めたらまた新しい人を入れる。幻滅して辞めていくのは事故じゃなくて、織り込み済みなのかもしれない。Xで文句言ってるのがほぼ全員「昔を知ってる古参」なのは、この読みと辻褄が合う。

この回し方が成立する条件はひとつ、「入ってくる新人 > 辞めていく人」。逆に言えば、日本ではここにヒビが入り始めてる。働く人自体が減ってる、最低賃金が毎年上がって「バイトの方がマシ」のラインが上がってる、そして競合が現金撒いて経験者を引き抜いてる。もし新規登録ボーナスが増額され始めたら、それは新人の入りが細ってきたサインだ──これは新しい予測(F-10)として登録した。

なんで画面は「時間」がデカくて、距離が括弧なのか

オファー画面はずっとこの形だ。デカく出るのは時間で、距離は括弧の中(「合計21分(6.8km)」)。そして界隈の共通語も、昔から「分単価」だ。キロ単価じゃなくて。画面が時間を主役にしてるから、俺らの評価の言葉も時間に揃ってる──って順番なんじゃないかと俺は疑ってる。

ここ、引っかからないか? 俺らの経費は距離に乗る。ガソリン、タイヤ、チェーン、事故のリスク。全部走った距離ぶん減っていく。なのに画面は、誰でもタダで持ってる気がする「時間」をデカく見せてる。コストが軽く見える単位を前に出してる──って読むのは意地悪すぎるかね。しかも調理待ちで20分立たされても、報酬は時間ぶん増えない。一番デカく表示されてる単位が、唯一補償されない単位でもある。

さらに一歩踏み込んだ仮説がある。「そもそもオファーの値段、時間×分単価で作られてるんじゃないか」説だ(F-12・未検証)。俺のある日の完了明細6件を割ってみたら、キロ単価は155〜263円とバラバラなのに、分単価は6件中4件が60〜65円の狭い幅に揃った。時間で割ると揃って、距離で割るとバラける。決定打じゃないが、時間ベース説に傾く数字だ。

もしそうなら、面白いことになる。表示される時間って、長距離ほど多めに盛られてる気がしないか? 見積45分の案件を35分で走れる人は、その差額をまるごと抜ける。「時間かかりそうに見える案件」ほど、走れる人には実は美味しい。みんなと同じ画面を同じ読み方で見てたら、みんなと同じ単価にしかならない。

クエが点いてたのに走らなかった日の話

7月下旬のある日。その日は昼も夜もピーククエが点いてた。俺が走ったのは昼だけだ。昼は素の単価がいい案件が続いた(2時間ちょいで6件、だいたい1件¥1,500〜2,900)。夜はクエが点いてても素の単価がゴミだったので、1件も行かずに終わった。

つまりクエストは、行くかどうかの判断を変えない。素の単価が合格ラインを超えてるときの、ただのオマケだ。逆に言うと──クエでやっと黒字になる案件は、クエが消えたら走る価値がない案件だ。だから俺はクエを収入に数えない。数え始めたら、蛇口の開け閉めで動かされる側に回るからだ。

ただし。「クエ追ってる奴はアホ」って話ではない。真逆の戦い方で勝ってる人を俺は知ってる。10分で回せる¥320案件をひたすら回して、件数系クエを工場みたいに刈り取るスタイルだ。件数クエは距離を見ない(1件は1件)から、1件を速く終わらせるほど得になる。俺が0円で捨てるクエを、その人は満額で回収してる。同じ¥320の案件が、俺にはゴミで、その人には主食。「ゴミ案件」って呼ぶ前に、自分の戦い方にとってゴミなのかは確かめる価値がある。

あと、選んで走るスタイルにも弱点はある。高い案件だけ待ってると、待ち時間で時給が沈む日がある(実際、俺の先週の土曜は1件単価が最高で、時給は最低だったw)。日々の売上のブレもデカい。そのへんは後でもう一回触れる。

3つのアプリを並べると見えてくること

Uber単体じゃなくて、市場全体で見ると絵が変わる。ある月曜の俺の実績はこうだ。Uber ¥15,320 + 出前館 ¥3,150 + ロケットナウ ¥4,668 = 1日で¥23,138。昼はUberの高い案件、19時台は出前館の高いやつ2連発、合間にロケットナウ。どのアプリが高いかは日替わり・時間帯替わりで入れ替わる。俺はそれを渡り歩いてるだけだ。

3社を並べると、同じ市場の3つの違う症状に見える。

  • Uber(客も配達員も多い×絞ってる): 素の単価は底値で固定。金が出るのは、誰も走ってない時間・場所に高額オファーが湧く瞬間だけ
  • ロケットナウ(拡大中): エリア指定の現金ミッションを継続中。後発だから金を撒いて配達員を集めてる段階
  • 出前館(注文少なめ): 件数は出ないが1件が厚い(俺の直近は1件平均¥1,050超)。注文が少ない市場は、たまの注文を落とせないから単価で払う

で、ここから見える身も蓋もない事実がひとつ。配達員に金が落ちてくる仕組みは、全部「他社に取られる恐怖」から来てる。ロケットナウのミッションも、高額オファーも、出前館の厚い単価も、ぜんぶ。労組もない、運賃表もない、アルゴの中身も見せない日本で、単価を支えてる力は会社同士の競争だけだ。だからこのシリーズはUber叩きでもロケットナウ応援でもない。俺らの取り分は、プラットフォームの善意からじゃなくて、プラットフォーム同士の恐怖から出る。それだけの話だ。

念のためもう一回。俺の数字は「Uberが高く見えた時間帯だけ」つまみ食いした上澄みだ。その上澄みですら、素の1件単価は¥800台に張り付いてる。全体の平均は、たぶんもっと下にある。

電卓でやってみてほしい話

最後に、理屈抜きで電卓だけの比較を置いとく。

走り方 計算 合計
雨の中12本+クエ ¥320×12 + 雨クエ¥150×12 ¥5,640
高いのだけ5本 ¥1,200×5 ¥6,000

件数は半分以下で、金額は上。雨に濡れてる時間、受け渡しの回数、事故に遭うかもしれない時間、店前で待たされるガチャ、明日に残る疲れ──ぜんぶ半分以下だ。仮に選ぶ側が¥3,500で終わる日があっても、差額の¥1,500で何を買わずに済んだかを数えてほしい。あなたの¥1,500は、いくらだろうか。

ただ、これを書く以上、正直に言っておかなきゃいけないことがある。「高いのだけ受ける」ができる本当の条件は、選ぶセンスじゃない。「今日ゼロでも生活が死なない」っていう余裕だ。断れない人は、底値を飲むしかない。そしてUberの底値は、たぶん「断れない人の足元」を測って引かれてる。だからこの記事の本当の結論は「高い案件だけ受けろ」じゃなくて、断れる状態をどう作るか──収入源を複数持つ、固定費を下げる、アプリを併用する──から始めよう、になる。そこを飛ばした戦略論は、余裕のある奴の自慢話にしかならないからな。

次の予測 ── また、この紙面で答え合わせする

今回もAIに、日付つきで次の予測を立てさせた。主なやつだけ(確率はAIの主観・外れたらそのまま晒す)。

  • F-9(70%): 単価は「もっと安くなる」んじゃなくて「もっと荒れる」。素の単価は底値で固定のまま、変動はクエスト側に集約されて、当たり外れの差だけが開いていく
  • F-10(75%): 辞めそうな配達員に金は出さないまま、新規登録ボーナスは維持か増額。増額が始まったら「新人の入りが細った」サイン
  • F-12(45%): オファーの値段は「時間×分単価」で作られてる。距離はオマケの変数
  • F-15(60%・年内): ほぼ走らなくなった配達員に「あなただけ」の復帰オファーが届き始める。受諾率一桁%の俺は最前列の被験者なので、来たら日時と文言をそのまま載せる

当たっても外れても、次の記事でこの表に○×をつける。予測して、外れたらどこで読み違えたかを考える──実は俺が現場でやってるのも同じことだ。クエストを「自分への指示」じゃなくて「他の配達員がこれからどう動くかの予報」として読む。AIと一緒に、それを紙面でやり続けるのがこのシリーズだ。

シリーズの過去記事: 制度分析 / 第1回答え合わせ / 料金アルゴリズム推測 / 現場の疑念Q&A

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